2019年09月20日

漫画『血の轍』押見修造

過保護な母静子の息子で中二の長部静一は、
母の狂気に気づきはじめる。
そして圧倒的な支配下に置かれていく。
元々、母には抑圧され鬱屈していた暗い感情が
渦巻いていたらしく、それが徐々に表出した。
静一のいとこにあたるしげる親子との旅行中、
「事件」が勃発。崖でふざけるしげるが
落ちそうになったのを一度は助けた静子。
だが、衝動的にしげるを突き落としてしまう。

「ふざけていたしげるがあやまって落下した」
母をかばい、口裏合わせをしたことで静一は
共同犯的な立場となり罪の意識・罪悪感に陥る。
しげるを気遣うフリをして、日常をそのまま過ごす
母に対して恐怖と不気味さを感じる静一。

そんな静一は同級生の吹石からラブレターをもらう。
吹石は静一が好きだった子であり母に見つかる。
勝手に手紙を読み出して、しかも破り捨ててほしい
という母に静一とともに私も思わずあんぐりした。
自分の心の中の大事な部分をズタズタにされ、
言葉を失ってしまう静一。
だが、吹石の存在で徐々に「正常」を取り戻す。

DSC_0405.jpg


静子のヤバさを知り、静一を守ろうと急接近する吹石。
母に対する嫌悪感や、不信感から吹石と逃避行を計る
静一であったが…。

母の無償の愛という言葉はよく聞くが、
愛情と愛憎は紙一重。
ズレた愛情、子離れ・親離れがうまくいかず
その愛情の発露が歪んだ形で出てきたら…。
そして、母には日常をぶっ壊したいという
破壊願望が発露することが度々ある。そこがまた怖い。

また母と恋人(結婚相手)の戦いは有史以来のテーマと
思われるが、彼の将来を想定しただけでゾッとするね。
「HUNTER×HUNTER」の中で、
「母と恋人どちらか片方しか助けられないとしたら
 どっちを助けるのか?」という沈黙せずにはいられない
命題を出されたときに似たモヤっとした感覚。

DSC_0406.jpg


同著『惡の華』でも心をザワつかせられたが
心臓を悪魔にワシ掴まれるような圧倒的な不気味さは
流石の一言。
映像化、特に映画向きな表現力の巧みさは見事で
物語に引きずり込まれる。
主要登場人物の二人には全く共感できないけど、
いわゆる「普通」(作中では父)ではない母。
彼女に感化され変になっていく息子という構図は
ある意味、地球規模マクロ的にもあてはまる。
トランプの悪影響で壊れていく人や世界のようだ。

ある種の気持ち悪さは押見修造作品の特徴だが
愛情のエゴが暴走した物語を見届けたい。
小学館ビッグコミックス 7巻〜
posted by おすすめ漫画、漫画百選、漫画名言 at 07:01| Comment(0) | ☆☆☆☆のおすすめマンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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