2015年03月22日

漫画『羊のうた』冬目景

離れ離れになっていた吸血鬼の姉と弟。
滅びゆく運命を背負いながら、心ある人の支えの中で
生きていこうともがく姿を淡々と描いた傑作。

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高校生の高城一砂は幼少期に母を亡くし、
父の友人であった江田夫妻と暮らしていた。
江田夫妻は一砂のよき理解者であり保護者だったが
遠慮もあり、ぎくしゃくした関係。

ある日、異性として意識する美術部の同級生
八重樫葉の腕に付着した赤い絵の具を見た一砂は
血を連想して倒れてしまう。
その際に、一砂は自分の中に得体のしれない
どす黒い感情があることを知る。
また自分がかつて住んでいた家、姉の存在を思い出す。

導かれるように昔住んでいた家にやってきた一砂は
姉千砂と再会した。
千砂によって、高城家が抱える「病」の話を聞く。
高城家は吸血鬼の様に他人の血が欲しくなり、
発症した際には暴力的な衝動に駆られ、
他人を傷つけてしまうことがある。
但し少量の血を飲むことで症状は治まる。

この病は女性に多く現れ、男性にはあまり現れない。
どうも一砂はその忌まわしい症例が出たようだ。
姉の千砂は三歳の時に発症し、苦しみながらも
父やよき理解者水無瀬がいたのでなんとか生きてきた。
母が亡くなった際、父の悲嘆は大きく
その負担をなくすため一砂は江田夫妻にひきとられた。
ちなみにその父は一年前に亡くなっている。

はじめは一砂を拒絶した千砂。
だが自分の近しい人を傷つける、
とりわけ八重樫を傷つけるかもしれない
と恐怖に駆られていた一砂を見て自らの血を与えた。

傷つけることもそうだが、自分が傷つくことも怖い。
色々な気持ちをごまかすことはできない。
実際に高城の一族は自己嫌悪に陥り自殺、発狂する者が
後を絶たず、結局二人以外に生き残っている者がない。

物語は常に死の影がつきまとい、終始暗いのだが、
主人公二人にとって救いなのは血の通った心優しい
人たちが彼らのことを尊重し本音でぶつかっていることだ。

羊の群れにいたのは狼ではなく牙の生えた羊であった。
開き直れる図太さもなく、罪悪感に苛まれる
悪党ではない繊細な彼らに残された道は破滅か?
それとも?
バーズコミックス 全7巻 ☆☆☆☆★
ラベル:おすすめ 冬目景
posted by おすすめ漫画、漫画百選、漫画名言 at 07:42| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆☆☆☆★のおすすめ漫画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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【安寿(あんじゅ)】管理人
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 幼少の頃から
 漫画が大好きだった私が
 まさか漫画家になるとは
 誰も予想しませんてした。
 そして実際なりません
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