2012年07月29日

漫画『日出処の天子 ひいづるところのてんし』山岸涼子

聖徳太子と蘇我毛人の運命的な出会い。
深い絆で結ばれながら、避けられぬ悲劇を描く。

6世紀後期。
大王(おおきみ)と地方豪族が政治を支配する世界。
有力豪族で大臣蘇我馬子の長男毛人(えみし)は
妹の刀自古と共に楽しい少年時代を送っていた。

馬子は、まだ10歳の聖徳太子(厩戸皇子)に
「仏法を理解していない」と言われご機嫌斜め。
馬子は熱心な仏教派であり、ライバル関係の
物部氏(神道派)らに絶対に弱みを見せたくない。
「父の腹立ちの種は息子にも及ぶ」のである。
まだ一族の長男として自覚のない毛人は、
馬子からはっぱをかけられてしまう。

気分を変えたいと池にやってきた毛人は、
まだ寒いのに泳いでいる女を発見。
妹の刀自古と勘違いし、話しかけようとするが、
仙女と見紛うほどの美少年厩戸皇子だった。
(このとき毛人は、美少女と勘違いしている)

厩戸皇子は、柔らかな指・雲のような豊かな髪
花のような美しい顔、口もとは愛らしく、
瞳はつぶらではっきりした美少年であり、
人並みはずれた聡明さと超能力やカリスマ性を
兼ね備えた「弥勒菩薩」の化身のような超人。
超能力…テレパシー、宙を飛ぶ、物を飛ばす、
人を操る、天気を司る(一人ではできない)、
鬼を出す、異界のものが見られるなど



皇子の持つ不思議な能力を目の当たりにした
毛人だったが、なぜか皇子の超能力が効かない。
その得体の知れなさから恐怖する毛人だったが
妖しい魅力や大臣の息子という立場もあり、
実の母さえ恐怖する皇子と厚い情で結ばれていく。
皇子にとっても「本当の自分を受け入れてくれる」
唯一無二の存在として
毛人の存在はどんどん大きくなっていく。

政治を支配するという強い野望を持つ皇子は
蘇我馬子や後の推古天皇と表面的に結託し、
ライバルの物部氏や天皇排斥を画策。
恐ろしいほどの聡明さを持つ皇子は
無能・恥知らず・人望なしのダメ三冠王の崇峻天皇を
じわりじわりと追い詰めていく。

権謀術数うずまく政治の対決、それに密接に関係する
家の復興や繋がりを目的とした結婚。
そして、展開される壮絶なまでの恋愛関係。

神懸り的な超能力とカリスマ性を有しながら
満たされない想いを抱き苦悩する厩戸皇子。

この物語の大きな要素のひとつは純愛もあるが
「道ならぬ恋」の数々。許されぬ禁断の恋。
いわゆるボーイズラブの先駆け的作品。
成就されない多くの想いが、更なる悲劇を生むのは、
いつの時代も変わらない。

随所に作者の遊び心が見られシリアスストーリーに
花を添える。カテゴリーとしては歴史・恋愛漫画。
ルビ(ひらがな)表記が徹底しているので
こどもも読めるが、内容は結構ハードであり
大人も十分に楽しめるレベルの高い作品。



☆☆☆☆+ 白泉社文庫版全7巻

最終巻7巻には「馬屋古女王」も収録。
厩戸皇子の死亡。その棺の上に現れた厩戸皇子
そっくりの美女。次々と誘惑に堕ちていく男たち。
稀代の天才を有しながら、没落していく上宮王家の
悲劇を甘美あふれる内容で締めた完結編。
posted by おすすめ漫画、漫画百選、漫画名言 at 07:46| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆☆☆☆のおすすめマンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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【安寿(あんじゅ)】管理人
 自称「漫画のソムリエ」
 埼玉出身、趣味でブログを
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 本屋が好きです。
 
 幼少の頃から
 漫画が大好きだった私が
 まさか漫画家になるとは
 誰も予想しませんてした。
 そして実際なりません
 でした。