2010年05月03日

漫画【ブッダ】手塚治虫

シッダルタの生涯をユーモラスに厳かに描いた
一代叙情詩。
圧倒的に存在する階級制度と無慈悲なまでに断行
される差別。弱肉強食の自然の掟。
ひとつの大きなテーマである「死」。
そして、貫かれる「愛」。
生きとし生ける者すべてに向けられるべき
命の尊さをときにコミカルに、時に残酷に描く。
たくさんの殺戮とたくさんの悲劇によって
巻き起こされる人間ドラマと「悟り」。
【生き物すべてが密接に繋がっている】
【人はどのように生きるべきなのか】
を語りかける不朽の名作。





3500年前のインド。
バラモン(僧、神官)を最高位として形成される
揺るがない絶対的カースト(階級制度)。
奴隷以下として蔑まれ、
人間扱いされぬ身分の子タッタ。
自分の命は獣と変わらない
命の尊さはケダモノだろうと人間だろうと同じ
と悟ったタッタは、
哺乳類や鳥、蛇などと心(魂)を通わせ、
動物に魂を乗り移らせる超人的能力を持つ。

ある日、奴隷の身分であるチャプラが運んでいた
布を盗んだことでタッタとチャプラは知り合う。
母親が家畜のように売られてしまう現状を嘆き、
階級制度に疑問を投げかけるチャプラに同情した
タッタは、チャプラと行動を共にすることに。

また、世に名声を轟かせているアシタ聖者
(ただの水をコーラに変える(本当はワイン)
神通力を持つと噂されるほどの聖人)
の弟子であるバラモンのナラダッタも
「世界を変えるかもしれない存在」
というアシタの予言によって
タッタに会いに来た。

そしてこのままでは母親が売られてしまうと、
4人で旅に出かける。
タッタのすばらしさに感服するナラダッタや、
奴隷という身分ではろくな想いをせず、
母親に恩返しもできないとチャプラは
気づかされる出来事が起こる。

シャカ一族などの侵略目的で進軍する
大国コ―サラの将軍ブダイを助けたチャプラ。
自らの身分を隠し大きなチャンスを掴みとる。
血を吐くような努力によって出世を果たすが、
野心に燃える乱暴者の最強戦士バンダカや
新たに生まれた身分違いの恋により苦悩する。
結局チャプラは奴隷という身分があだとなる。

そして役を果たすために、結果的に
アシタの怒りを買ったナラダッタ。
その報いを受け…。

いつだって理不尽な想いを強いられるのは弱者。
大切なものを踏みにじられ、いわれのない
差別を受けるのは社会的弱者。心やさしき者…。
大切なものを奪っていく侵略者たち…。
絶対にコ―サラに仕返しをしてやる。
という想いを胸にタッタは成人した。

同じ頃小国シャカ一族に奇跡が起こっていた。
本来コ―サラにあっさり侵略されるはずだった
シャカ国だったが、イナゴの大群などに
よって疲弊した軍はその侵略の手を弱めた。
そして、女王は受胎している状態で、
自分の脇に6つのキバを持つ高貴なゾウが
入っていくという吉兆を知らせる夢を見た。
きっと産まれてくる子は世界を変えるような
子供に違いない。そして確かに侵略を退け、
吉兆は起こっていたのだ。
「シッダルタ」と名付けられたその子に大きな
期待を寄せていたのは両親だけではなかった。
タッタも差別と理不尽に塗れた世界を変えて
くれる存在としてシッダルタに期待していた。

しかし、成長したシッダルタは病弱だった。
形だけで実のないバラモンの戯言や幻想、
そして身分制度に疑問を抱くシッダルタ。
タッタとの出会いや、真の聖人などに出会い
「悟り」を開いたシッダルタはブッダ
(開いた人)と言う名を梵天より賜る。

多くの葛藤や試練を受けながら仏門の世界に入り
人々の精神世界を救うという普遍のテーマに
取り組む。自分の教えを聴く者は動物だろうと
人間だろうと構わない。



彼のわかりやすい教えは、争いが絶えず、
憎しみが蔓延した世界に暮らす
すさんだ者たちの心を捉えていく。
(もちろん全員が全員救われるわけではない)


【動物に命の尊さを教えられることも】

いつしか巨大勢力となったブッダ一向。
中にはブッダを利用し、自分がのしあがる為に
利用しようと目論む輩も現れる。

預言者アッサジに代表されるオリジナルキャラ
悪魔に魅入られたアマンダに代表される
実在する人物なども入り乱れたストーリー。
ブッダ(仏陀)の自伝・伝記というよりも、
手塚先生が語るように「仏典」と異なる箇所も多く
手塚カラーの強い創作モノである。

10年以上に及ぶ大作であり
「火の鳥」と似たテーマを持つ。
管理人的には、長編「火の鳥」と位置付ける。
時代考証を一部無視し、わかりやすい横文字
が使われたり、冗談のようなセリフも登場。
ブラックジャックや写楽を模したアッサジ
などを筆頭に手塚作品キャラクターも数多く登場。
「うる星やつら」の錯乱坊(チェリー)が
登場したりと遊び心も満載である。
また、今回は講談社手塚治虫漫画全集全14巻を
読んで描いた。おすすめ度合い ☆☆☆☆★

ブッダ(1) (手塚治虫漫画全集)

ブッダ(1) (手塚治虫漫画全集)

  • 作者: 手塚 治虫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1983/04/12
  • メディア: コミック



posted by おすすめ漫画、漫画百選、漫画名言 at 07:43| Comment(0) | TrackBack(1) | 手塚治虫 BJ、どろろ、ブッダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt: 手塚流のブッダ、他とは違う。   シャカ族の王子として生まれたシッダルタ。その生涯は苦しみに満ちていた。戦争、飢餓、自然災害、疫病、そして階級差別。いろんなものが人を苦...
Weblog: りゅうちゃんミストラル
Tracked: 2010-06-12 20:13



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【安寿(あんじゅ)】管理人
 自称「漫画のソムリエ」
 埼玉出身、趣味でブログを
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 漫画以外だと
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 松井秀喜さんと
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 本と犬と猫、
 音楽鑑賞と昼寝、お笑い、
 風呂と温泉、旅行、
 本屋が好きです。
 
 幼少の頃から
 漫画が大好きだった私が
 まさか漫画家になるとは
 誰も予想しませんてした。
 そして実際なりません
 でした。