2010年03月31日

漫画『きりひと讃歌』手塚治虫

人を犬のような姿に変える奇病「モンモウ病」に
よって翻弄される人々を医学界の醜聞を絡めて
描いた問題作。

M大医学部の附属病院は、日本が世界に誇る
近代医療設備を有し、世界からも患者が押し寄せる。

モンモウ病患者を観るのは大名行列を巻き起こす
竜ヶ浦内科医長。独善的で傲慢。固定観念に縛られ
名誉欲の塊。現在モンモウ病に対する効果的な手段
はなく、ほどなく患者は死を迎えるような状態だ。
竜ヶ浦はモンモウ病を伝染病と考え、そのことを
証明することに躍起。彼は日本医師会の会長に
なるために、モンモウ病に関しての研究を発表し、
自分を猛アピールしたいのである。

竜ヶ浦の部下であり文字通り彼の手足のように
使われる存在である医師の小山内と占部は、
この奇病の謎を究明しようとしていた。

竜ヶ浦の命令によって
小山内はフィアンセがいるのに僻地の偏狭な村に、
占部はアフリカに赴くことに。
そこには、野望に燃える竜ヶ浦の陰謀があった。
小山内は村娘である「たづ」と半ば強引に婚約
させられる。
不気味で閉鎖的な村で、監視され、監禁される。
閉塞感を感じていた小山内は、モンモウ病に発症。
「先祖返り」を起こすかのように生肉を食べだす
小山内は、この恐ろしい病気に脅えながら生きる
はめに。唯一の救いは彼を外見で判断しないたづ。
彼は、いつしかたづを大切に思っていたが
悲劇が訪れる。

一方、占部はモンモウ病に似た症例が確認された
アフリカにやってきた。症例を説明されながら
白人優位の圧倒的差別が罷り通る社会や物言いに
腹を立てながら説明を聞く占部。
この病気は、白人にもかかるのではないか?
人種など関係なく、発症するのでは?

陰謀によって、異国の地にやってきた小山内は、
悪魔的享楽を貪る大富豪「万」に囚われていた。
貧困にあえぎ、人間扱いを受けず、
幼き日に医者に親を見捨てられた万は
社会の仕返しとばかりに人間を蔑み、
いじめ抜くことをいきがいにしていた。

偏見と差別、人間の「業」、残酷で不当なまでに
まかり通っている社会に一石を投じる。
主人公小山内は桐人(キリト)であり、
挿絵で表現されたり、引用で出てくるように
過酷な運命を強いられる「キリスト」がモチーフ。
(幼いキリストとも捉えられる)

登場人物の大半が、ひどい目に遭うという
過酷なストーリー。医者のモラルの崩壊、
人の命よりも名誉を選ぶ竜ヶ浦。そして、
「白い巨塔」的な医療の世界の矛盾と皮肉を
交えて描いた問題作。

人の顔をかぶった獣的表現があるが、
獣よりも性質の悪い人間の邪悪な部分をガンガン
描いているので、結構読むのはしんどい。
内容自体は優れているんだけど。
小学館文庫 全3巻。

きりひと讃歌 (1) (小学館文庫)

きりひと讃歌 (1) (小学館文庫)

  • 作者: 手塚 治虫
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 1994/11
  • メディア: 文庫



ラベル:手塚治虫
posted by おすすめ漫画、漫画百選、漫画名言 at 07:05| Comment(0) | TrackBack(1) | 手塚治虫 BJ、どろろ、ブッダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt: 手塚治虫の「きりひと讃歌」を読んだ。     大学病院の内科医、小山内が主人公。四国の辺境で発生した奇病、モンモウ病。人が獣のような姿になって死ぬ。この病気を調べるべく...
Weblog: りゅうちゃんミストラル
Tracked: 2010-05-08 14:33



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【安寿(あんじゅ)】管理人
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 まさか漫画家になるとは
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 そして実際なりません
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