2008年06月11日

「鬼退治」

「桃さん、ぶっちゃけ奴らを退治するの、
ムリっぽくないっすか?」

渋谷でスカウトしたチャラ男のサルの奴が、
桃太郎(源氏名)に諫言した。

サルの奴がビビるのは、ムリもない。
指定暴力団「鬼が島」は、渦武器町どころか
全国に悪名轟く、まさに外道という集団。

サルの危惧などどこ吹く風で、桃太郎は
焦点の定まらない遠い目をしていた。
「夏子……。オレはやってやるぜ」

彼は、大量のお酒を用意していた。
これは、桃太郎が半年前チャットで知り合った夏子が
丹精込めて作ってくれた「夏子の酒」だ。

ホストとなり、すさんだ心で毎日をすごしていた
桃太郎にとって、ひたむきに日本酒の魅力に話す
夏子さん(当時76歳)の姿は眩しく映った。
かさかさした夏子さんの腕が触れたとき、
かさかさした桃太郎の心に一輪の花が咲いた。

これが恋?
夏子さんに大量の金を吐き出させながら、
どこかでその行為に対して、心を痛めている
自分に気が付いた桃太郎は、それ以来、
彼女と店以外で出会うようになった。

桃太郎は、夏子とひとなつの恋を楽しんだが
夏子さんは、あっさり寿命で死んでしまった。

いっしょに映画を観ようねって、
あなた約束したじゃない……。
いっしょのお墓に入ろうねって、
あなた約束したじゃない……。

映画もたくさん観たかった。
「銀のエンゼルとGLAYTERU」いっしょに観たかった……。

ふたたび生きる意味をなくしかけた桃太郎だったが、
夏子さんが生前苦しめられた「鬼が島」に復讐を果たすと
いう新たな目標ができた。桃太郎は、ゆっくりと歩き出す。

桃太郎とサルの手には、夏子が丹精込めてつくった酒が
握られていた。夏子は、生前たくさんの想いこめていた。
この酒に。
桃太郎は、そんな夏子をより愛しく思った。

にがみもなく、かおりもすばらしく、のどごしもさわやか。
安らかな眠りにつけるそんなお酒。それが夏子の酒。

二人はゆっくりと「鬼が島」に赴く。
その格好は誰が見ても、宅配便のお兄さんであり、
間違ってもホストにもチャラ男には見えまい。多分……。

復讐の鬼と化した桃太郎は、鬼が島の連中に送る
彼女特製の酒に名前をつけた。

「鬼殺し」
にがみなく、かおりもすばらしく、のどごしもさわやか。
やすらかな眠りにつけるそんなお酒。           −完−
posted by おすすめ漫画、漫画百選、漫画名言 at 06:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 安寿の茶番劇(創作物) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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【安寿(あんじゅ)】管理人
 自称「漫画のソムリエ」
 埼玉出身、趣味でブログを
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 幼少の頃から
 漫画が大好きだった私が
 まさか漫画家になるとは
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 そして実際なりません
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