猛暑が続く日本列島ですが、みなさんお元気ですか。
さて、本日のお題は漫画における時間の流れ方です。
つまりサザエさん方式か、ドラゴンボール方式か
はたまたそれ以外かという問題です。
【サザエさん方式】
時の流れは1年周期で、春夏秋冬を経て
新学期を迎えるとリセットされるという方式。
クレヨンしんちゃん、ちびまる子ちゃん、
あたしンち、あさりちゃんなど、
いわゆる「クンちゃん漫画」(さくらももこ提唱)に多い。
児童文学の傑作ズッコケ三人組もこの方式。
クリスマスやバレンタイン、卒業式などのイベントネタを
毎年のようにしても誰もそのことに触れない。
キャラ同士の間で暗黙の了解があるらしく、
わざとそこからズレた発言をした場合、勘違いとされる。
しんちゃんは妹ができたけど永遠に5歳という設定。
キャラクターごとに誕生日の設定こそあるものの、
春を迎えると不思議な力が働き若返る。
まる子、カツオにあさりは宿題に追われ、
「夏休みの友」にお前なんて友達じゃないとなげく。
クリスマス会では、みまつやのオヤジがサンタに扮し、
一瞬でバレる。あまつさえ泥棒に入られたりと忙しい。
ある種の時空メビウスの輪にとじこめられたような
呪いの輪の中の住人。それが彼ら。
春になったら記憶すらもあいまいになるたそがれさん。
それが彼ら。
ある意味、時間は無限にあり、ありがたみがない。
作者とキャラクターの年齢は離れるばかり。
感性が変わったり、もう自分よりも母の方に近いよ…
と、けら先生がつぶやいたのもうなずける。
単純に巻数通りの時系列にならないので、たとえば
冬初登場した人物がそれ以外の季節に出てきたら…
あれ変だな変だなおかしいなおかしいなということに。
金田一少年、名探偵コナンもこれにあたり、
永遠の17歳である。(現在のところ)
解決した事件が多すぎて矛盾が生じ、
ポケベル、ケータイ、スマホに違和感を持ち
ファッションを筆頭とした流行に謎が深まるばかり。
コナン君における一番のバーローな謎は
黒の組織のボスの正体ではない。
基本的にキャラクターは年をとらず、
能力が急激に向上したり衰えることはない。
主人公の性格としても向上心や自立心に欠ける
いじられキャラ、憎めないタイプの
「共感型キャラクター」が多い。
キャラが変わることもあるが、次の回では
しれっと戻っていることも多々ある。
【ドラゴンボール方式】
キングダム、ワンピース、幽白、ハンター、ヒロアカ、
ジョジョの奇妙な冒険、ダイの大冒険、バガボンド、
スラムダンク、アイシールド21、ハイキュー、
タッチ、弱虫ペダル、あさひなぐ、
君に届け、ちはやふる、ハチクロ、
宇宙兄弟、め組の大吾、3月のライオンなど
格闘漫画、スポーツ漫画、ラブコメなど。
基本的にキャラクターの成長を描く作品は
この手法が採用される。時間は有限で流れる。
強力なライバルや敵との試合や死闘、国盗り合戦、
地方大会突破や全国大会のためへの練習や人間ドラマ、
高校卒業までの恋愛などを描くとき、
やはり期限が設けられていることは大事なのかもしれない。
「夢に日付けを」を合言葉に目標に向かってひた走る。
桜木花道やダイに至っては3〜4か月で最強にたどり着く。
リセットが効かないからこそ燃える。そんな展開に向く。
基本的に向上心、向学心の塊のような前向きで
努力家のキャラクターが多く、飛躍的な成長を遂げる
こともままある。発想の飛躍、頭脳戦、困難や苦行に
あえて立ち向かう姿は読者にあこがれを抱かせる。
いわゆる「ヒーロー型」キャラクターが多い。
大吾は危険を顧みず人名救出に向かい、
デク君は考えるより先に身体が動いてしまう。
自分の限界を超えようと自らを追い込み、
仲間や他者のために知恵や汗をふりしぼり労をいとわない。
ヒロイズムや美学を追求する意識高い系キャラがズラリ。
『火の鳥』
火の鳥は、宇宙生命体(宇宙そのもの)であり、
何度も生まれ変わり、永遠の存在である。
その血を飲むと生き物に永遠の命を与えると言われ、
惑星の生命体が全滅しそうになった際は、
ある人間に永遠の命を与えるエピソードもある。
この作品においては、時系列自体がはっきりしない。
原始生活を送っていたキャラクターと、
科学の向上により宇宙に飛び出したキャラクター、
仏師として怒りにかられるキャラクター、
インチキ宗教に立ち向かうキャラクターに
惑星の祖となるキャラクター…といろいろ登場するが
結局どれが先でどれが後と時系列がはっきりわからない。
ニワトリが先か、卵が先か的永遠の命題である。
宇宙の果てで断罪を受けたキャラクター「サルタヒコ」を
例にとっても、誰が一体、祖先であり、子孫であるのか
判明しない。惑星が寿命を終え、新たに新星として
誕生して、発展を遂げ、いつしかまた寿命を迎える。
その繰り返しの中で生まれる「彼ら」を思うとき
永遠の虚しさとスケールの雄大さに鳥肌がとまらない。
過酷な立場や環境に立たされる主人公ばかりなので
人間的葛藤や人間的成長は著しく数奇な運命をたどる。
『それでも町は廻っている(それ町)』
この漫画も特殊である。タイトルで暗喩、
作者がコミックで提示した通り、
主人公である歩鳥の高校3年間の出来事を
バラバラに描いているので、キャラクター間における
距離感や親密度、理解度が大きく異なるのである。
まだ出会っていない人物がコマに描かれていても、
その時点では知り合いでないので会話もされない。
親密な関係でないので他人行儀にスルーされている。
しかも作中歩鳥は死にかけており、
(自分はいなくても世界は廻るという切なさ)
最終回でも変わった描き方がされている。
宇宙人に遭遇するSFネタや、
自分が存在しないパラレルワールド的異世界に迷い込む
『リカーシブル』的作品もある。
結果的に、歩鳥、紺先輩、タケル、浅井は
人間的成長を遂げたが、そんな中、足踏みキャラもいて
まぁある意味順当かもしれない。
『斉木楠雄のサイ難』
超能力者で主人公の斉木楠雄が壊滅的な被害を起こす
大噴火を未然に防ぐ手段を探している。しかし、
解決策は見つからず、その場しのぎの手段として
地球を1年前の状態に戻し、人々の記憶を改竄、
マインドコントロールすることで世界は成り立っている。
2学期になると変態霊媒師、元ヤン硬派、性悪金持ち、
かつおっぱい、無駄口名探偵…と毎年のように
転校生がやってくる。でもそのことが変だと
誰も指摘できないまま厄介なクラスメイトが増え続け
斉木君を苦しめる。
新学期を迎える3年生になる頃、くだんの災害は
起こると予知されており、斉木は問題の解決をはかるが
現在の所、有効な手段は見つかっていない。
斉木君はやろうと思えば3日で世界を滅亡できる
と豪語するが、どうやら守る方がよほど大変らしい。
結果として日本の借金のように先送りされている。
ちなみにこの話は最終回のための伏線とのこと。
『ドラえもん』
一見【サザエさん方式】と思われた。だが違う。
秘密道具の存在のせいで複雑だった。
時の流れを遅くする【時門】を筆頭に
時間に関わる秘密道具がある。
この漫画の22世紀の科学力半端ない。
タイムトラベルが可能なタイムマシンや
ウラシマ効果が期待できそうな高速飛行物体の存在。
なによりも、【タイムふろしき】の存在が大きい。
タイムふろしきを使うと、対象物(無機物に限らず、
人間、恐竜などの生き物にも効果がある)ので、
突発的な事故以外の病気や老死を回避することも可能。
のび太は無人島で救出されずに大人になったことがある。
「ぼくがおとなになったら、この漫画おしまい」
と叫ぶのび太を助けにやってきたドラえもん。
タイムマシンとタイムふろしきを使うことで原状回復。
記憶もそのまま…ちょっとこのコンボは無敵すぎるなぁ。
考えてみたら、ドラえもん定期健診なんかせずに
タイムふろしき使えばいいのに…。
それとも効果ないのかな…。
またすべての前提を覆す【もしもボックス】
(もしもこんな世界だったら…とつぶやくと
そうなる世界)もあって…。ドラえもんの世界では
本当あきらめなければほぼすべてのことが実現できる。