魅力的だが破壊的な側面を併せ持つ放射性物質を擬人化した
SF三部作。そして3・11後発表された「なのはな」を
収録した傑作短編集。
小学館フラワーコミックススペシャル
【なのはな】
あの日を境に世界的に有名になってしまった「フクシマ」。
かつて起こったチェルノブイリを学んだ小学生のナホは
失われてしまった生活、なにより消えてしまった
ばーちゃんが帰ってくることを願っていた。
しあわせだったあの頃。ばーちゃんとの想い出…。
夢の中でチェルノブイリの悪夢を体験するナホは不思議な少女、
そしてばーちゃんと出会う。いっしょに帰ろうと呼び掛ける
ナホであったが、祖母はいつも消えてしまう。
汚染されてしまった大地を浄化してくれるというなのはなは
失ってしまった大切なものたちに捧げるように。祈るように。
【プルート夫人 雨の夜 サロメ20XX】
プルトニウム、ウラン、核廃棄物。放射性物質を
絶世の美女や魅力的な踊り子、高貴な麗人に擬人化し、
人々の生活にどのような繁栄と滅亡をもたらすかを描く。
それは、人類の生活を飛躍的に向上させ貧困をなくし
進歩と絶対的なエネルギー問題の解消をもたらす。
同時に、抑制のきかない大事故を巻き起こす問題を
抱えており、現に25年に一度の周期で起こっている。
誰もが魅了される美女が国を世界に絶望的な悪夢をもたらす。
愛を与える絶世の美姫はまさに傾城。美しい舞は死の踊り。
否定し、危惧しながら、一度手に入れた豊かな生活を
簡単に手放せない人類は蠱惑的で甘美なワナに落ちる。
放射性物質を擬人化させたことで読者に感情移入させることを
見事に成功させ、人の持つ心の複雑さを巧みに描写している。
posted by おすすめ漫画、漫画百選、漫画名言 at 07:19|
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